彼よりも先に
車に気が付いた俺は走り出した。


今すぐにこっちに戻れば間に合う。

なのに、彼は進んで行く。

道路は緩いカーブだから、
もしかしたら見えていないのかもしれない

すぐ、近くまで来てしまってるのに。


だから彼に追いつこうと、止めようと、
その手を掴もうと、走って、叫んだ。


俺の声に振り向いた彼は、
ようやく車に気が付いた。


……でもそれは、遅すぎた。


彼が気が付いたのも、
俺が追いついたのも。


結局一緒に事故にあっただけで、
俺は彼を助ける事が出来なかった。