あと数秒。


それだけしか時間は無い。




なんとなく、俺は悟ってしまった。

ありえないはずなのに出てくる、
いくつかの、今日の記憶。



きっと、車から逃れる事は出来ないんだ。


そんな風に、この日は出来てる。



……ごめん、昴。



本当はさっきも、こっちを、
この言葉を言いたかったのかもしれない。

それなら丁度いい。

言えなかった俺の分も籠めて。



これで、振り向いてくれたなら。

そしたら、もう。




「昴!……愛してる」




急ブレーキと、ぶつかる音。