道の向こうまでは、 彼を押す力は無いけれど、 きっとぶつかるぐらいで済んだろう。 頭さえ打っていなければ、 すぐに目を覚ませると思う。 立場が多分、あの日とは逆になった。 先に目を閉じるのは俺で。 だけど、 やっぱり手ぐらい繋ぎたかった。 必死に動かす指先に、 彼があの日の俺のように 自分の手を伸ばすのが見えた。 それだけで、嬉しかった。