ジーカイザーと言えば、最近になってダッホ南街区に台頭してきた薬物シンジケートの名だ。

 そう、私が売られていた店の店主が話していたのを聞いている。

 なんでも、東のローグ大陸から流れてきた連中で、構成されているらしい。

 なるほど、男には少しローグ訛りがある。

「ふざけてんのか、てめぇ」

「ふざけているのはどっちだ。
品物の価値も判らない田舎者どもめ」

「てめぇ、言わせておけば。
たかが薬法師が俺達に勝てるとでも・・・」

 薬法師。

 確かに、ヒュードは草色のケープとツバ無し帽、そしてケープの上に掛けている大粒の黒真珠のネックレスと薬法師を示す格好をしている。

 薬法師とは、薬物を介して術を発動させる、いわば、触媒魔法専門の術師たちのことだ。

 不意に、ケープが翻り、ヒュードの左拳が男の顔面にめり込んでいた。

 本当に一瞬の出来事だった。

 男は何が起こったのか判らないまま、顔面を粉砕されて、その場に倒れた。

「ごちゃごちゃとうるせぇんだよ。田舎やくざが」

 彼は倒れた男にそう言い捨てると、何事も無かったかの如く、私を連れて歩き出したのだった。