と、その時、緩やかな午後の喧騒に怒声が重なった。

 私たちのすぐ後ろからだった。

「おい、待ちやがれ!」

 私が振り向く前に、彼が立ちどまって振り向く。

 私は右腕を掴まれたまま、彼の後ろに回り込まされた。

「なんだ、お前は」

 彼は目の前にいた怒声の主に、ゆっくりとした口調で訪ねた。

 怒声の主は、頭のはげ上がった大男だった。

「てめぇ、そのエルフは、俺達が競り落とすはずだったのを横からかっさらっていきやがって」

 そうか、この男は店で私を競り落とそうとしていた二組の内の一人か。

 確かに、あの時、彼のしたことを考えれば、怒って当然だろう。

「何を言っている。
俺が競り落としたのだろう。
文句があるのなら、俺より高い値で落とせば良かっただけだ」

 彼は、平然として言った。

 男は、その言葉に顔を真っ赤にした。

「てめぇ、よくも抜け抜けと言いやがったな。
俺達ジーカイザーを敵に回して無事にいられるとでも思うなよ」

「ジーカイザー?
ローグの言葉か。
何だか判らんが、どう無事にいられんというのだ?」

 彼は明らかに挑発していた。