ザーグ横丁は、さっきまで私が居た生き物専門の薬材店の他にも、生きた動物を扱う商店が軒を並べている。その中には奴隷商もある。

 生き物ならなんでも扱う、それがザーグ横丁だ。

 狭い通りには、竹篭や檻が店先に並び、多種多様の生き物たちが売られていた。

 通りは香が焚かれていて、動物の臭い匂いはあまりしない。

 その中を私は、右腕を彼に掴まれ、引っ張られるように進んでいた。

 彼、ヒュードは、淡い草色のケープで上半身を包んでいるが、そこから伸びる左腕は、がっしりとした筋肉に鎧われていた。

 少し痛いくらいに引っ張られているが、彼はそんなつもりも無い様子だった。

 だけど、私にとっては、彼の歩く速度に、小走り気味で着いていくのがやっとだ。

「どこへ行くの?」

 黙々と歩く彼に不安を感じて、自然と声が出た。

 自分の声がまだ出ることに、少し驚く。

 言葉なんて何ヶ月ぶりかしら。

「旧街区だ。そこに知り合いの店がある」

 こちらも向かず、ぶっきらぼうに答えが返ってくる。