「ありがとうございました」

 彼は突然言われたので、不思議そうな顔をした。

「昨日からお世話になりっぱなしで、お礼を言ってなかったから・・・」

 別に他意はない。

「くははは」

 彼は右手で顔を覆う様にして笑った。

「なんですか?私何かおかしかったですか」

 それに失礼だ。

「そんな顔して礼なんて言うからだ。
礼なんて物は必要ないぞ。
何しろお前は俺の所有物だからな。
この程度は、所有者として当然の義務だ」

 笑顔で答える彼の真相は判らなかったが、知る前に私のおなかが鳴った。