翌日、私は久しぶりにすっきりとした頭で目覚めた。

 ベッドで寝たのなんて、半年ぶり。

 ここは、ダッホ旧街区にある古い商店の二階だった。

 一階が空き店舗、二階が住居になっている木造二階建の老家屋だ。

 彼がダッホ旧街区に借りているねぐらの一つだと言っていた。

 ダッホ旧街区は、古い建物が多く、道幅も狭いため、再開発を待つ寂れた街だ。

 それでも、古くからの住民も多いため、再開発計画は、なかなか進まない様だった。

 すでに経済の中心も行政の中心も四方へ分散し、ダッホの空白地帯となっているはずなのに、この街は静かだが安定した社会を構成しているが読み取れた。

「ほう、それが感応系魔法というやつか」

 窓から朝の街並みを眺めていた私の背後から、突然彼の声がかかった。

「ええ、そうよ。
軽い深度のものだけどね」

 私はゆっくりと振り向いていった。

「話には聞いていたが、面白いものだな。
周囲の環境情報を物や空気から読み取る術とはな」

「でも、薬法師も似たような事するんじゃなくて?
物質の力を見極めて引き出すんだから」

「薬法師はもっとリアリストだよ。
元々その薬物が持っている力を利用しているだけだ。
薬法師の能力は、どれだけ薬物の力を効率良く引き出せるかに尽きる。
つまらん能力さ」

「薬法師を極めた証を持ってる人の答えがそれなわけ?」

「そう言うことだな。
だから、魔法階級であるお前さんが、改めて薬法師になろうなんてお勧め出来ないね」

「それなら、魔法階級の魔法こそつまらない能力よ」

 そう、こんな力が有るから、こんな身体になってしまった。

「俺は便利だと思うがね。
さあ、飯にしよう。
下に用意してある」

「えと、あの・・・」

「どうした。
エルフの食べられるものを用意してあるから安心しろ」

 エルフは内臓の作りがヒトと違うので、ヒトと比べて偏食だ。

 まあ、そんなことではなくて・・・