エルフの魔法階級は、いわゆる人間兵器の様なもので、ヒトとの停戦条約で、魔法力を抑える封環を耳にしていない者は、エルフ領域外に出ることを禁止させられている。

 まあねぇ、一人軍隊みたいなのがごろごろいるんですもの。

「いいえ、私は薬法師になりたくて、ここに来たの」

「ほう」

 あんまり意外そうな顔をしないな。

 エルフが薬法師を毛嫌いしていることを知ってるはずなのに。

 それなら・・・

「私を弟子にしない?」

 彼はゆっくりとグラスのヴァドを飲み干してから、言った。

「弟子以前に、お前は俺の所有物だ。弟子にはなれんし、俺は弟子なんか取らない」

「じゃあ、素材階級でもない私を所有してどうする気だったわけ?
自慢じゃないけど、私の髪は、本物の素材階級に比べたら最低ランクにも勝てないわよ」

「くく、そう卑下するもんじゃない。
お前の髪は素材としては優秀だよ」

「どういう事?
髪質検査で多少ごまかしたけど、それでも、ぎりぎり合格だったのよ」

「古き伝統あるエルフの髪質検査もうわっつら重視になったってことだな」

「そうなの?」

「だから、お前は俺の貴重な薬材だ。
今後常に手元に置いておくからな」

「・・・それって、近くであなたの技を見て覚えてもいいって事?」

「そこまでは、俺の知ったこっちゃ無い。
勝手にするんだな」

「やったぁっ!
私、一生着いていくわね」

 思えば、それまでもが彼の気まぐれだったのだろう。

 彼は軽く鼻で笑って、グラスに新たに注がれたヴァドに口を付けた。

 私もそれに倣う様に、酪茶を飲み干して、お代わりをもらった。