そうなのだ。

 九つの黒真珠を持つ薬法師といえば、薬法師の最高権威である薬法師ギルド元老院のメンバーで、年も相当なはずだった。

 それなのに、彼は20代後半から高めに見ても30代半ばと言う若さだった。

 そんなに若い九つの黒真珠を持つ薬法師なんて、私は聞いたことが・・・

「聞いたことがあるぞ、若くして九つの黒真珠を獲得した薬法師がいた筈だ。
確か、その薬法師らしくない立ち振る舞いから、付いた通り名がドラッグヘッド」

「ちがーう!」

 思いっきり彼は否定した。

「違う違うぞ、蛮族の者よ。
ドラッグヘッドじゃない。
俺は薬闘士、ドラッグファイターだ」

 そう言って彼は北荻の男の間合いに飛び込んだ。

 彼を向かえ打つように北荻の男は、両手を組み、天井近くから打ち降ろした。

 見た目より速く正確な打ち降ろしが彼の頭に重なる。

 床材とほこりを巻き上げて、北荻の男の落石の様な打ち降ろしは止まった。

 ほこりが収まり、視界が戻る。

 ゆっくりと、北荻の男がその場に崩れ落ちる。

 彼はぎりぎりで北荻の男の懐に入り込み、右フックを左脇に叩き込んでいた。

 あの場所って・・・もしかして・・・