静かではないが、何かが始まる予兆が訪れている。
授業はだんだんおろそかになって行き、皆それぞれが、ある一つのものに向かって動き出している。
「詩花は何やりたい?」
前の席の碧が授業中にも関わらず後ろを向き、詩花に話しかける。
「文化祭? 興味ねーや」
「このクラス全員がノリノリの中よく言うねえ」
「だって別にどうでも良くね? 帰宅部だから熱くなる必要もねーし」
窓に背中を預け、足を伸ばして楽な体制になりながら、碧は詩花の机に肘を突いた。
「ま。それもそーか。……ってお前真面目にノート取り過ぎじゃね?」
「ばーか。よく見ろよ」
詩花がコンコンと人差し指でノートを叩く。
「これ、一学期の一番最初の内容だろ」
碧は先生の口から蓄音機のように発せられる音に耳を澄ませ、黒板に書いてある数字の暗号と詩花のノートを見比べた。
「まじだ! お前頭いーな!」
「まあノート覗かれたら終了だけど」
二人で笑っていると、机の下に忍ばせてあった携帯が光った。
机にぶつからぬよう、そっと開く。
「優からだ」