彼女の家に入って 「お邪魔します」 と言ったら、母親らしい人が出て来た。 「あら、詩織一人? お友達連れて来たんじゃないの?」 どうやら俺の声は聞こえちゃうらしい。 「何でもないよ」 彼女の母親は もうお風呂湧いてるから と、さらっと話を流して少しむくんだ両足をリビングへと歩かせた。 俺の声は、ただ空気を震わせただけだった。