「……」

 お互いに少しいぶかしげな表情を浮かべたが、彼は何も言わずにそのままにさせた。

 拒絶して泣かれるのも面倒だと思ったし興味がないと言ってあるのだ、今だけの付き合いだと理解したうえでの事だろう。

 ここ数日で付近のマップはあらかた記憶しているが……カフェとなると多すぎてどの店を目指しているのか見当がつかない。

 マリアという女性も目指す店があるという訳でもなさそうで、とりとめもなく歩いているようだった。

「!」

 しばらく歩くと目的の店を見つけたらしく、ベリルを一瞥し腕をグイと引き寄せて中に促した。

 その店構えには多くの女性が惹かれるであろう可愛いバラで造られたオブジェと黒板にはピンクのチョークを使って描かれた花々にメニューの文字。