「…ありがとう、歩夢。」
そっと身体を離されて、少し寂しくなったのは気のせいなんかじゃなかった。
「うんん、私こそありがとう。」
精一杯の、強がり。
好きなのに、一緒にはなれない。
「…あ、もう一杯いれてくるけど歩夢もいる?」
冷めきったはずのレモンティーを一気に飲み干して、はる君が立ち上がる。
「あ、うん!ありがとう、ちょっと待って」
残っていたのを全て飲めば、思った以上に冷たくて。
冷めきったレモンティーは、いまの私には酸っぱ過ぎて、
いつもなら感じないのに、苦みさえ感じて。
空になったカップを渡そうとして、伸ばした手がはる君の指先に触れると、反射的に引いてしまった。
当然、渡し損ねたカップは下に落ちて、割れた。


