…数分後、部屋中に甘酸っぱいレモンの匂いが広がった。
たった今、いれたばかりのレモンティーを二つ持ってキッチンから出れば、ソファーではる君が眠りそうになりながら読書をしていた。
ん………どうしよう。
音をたてないように、静かにテーブルにティーカップを置いて、ソファーに座る。
まだ、温かいレモンティーを一口口に含めば、口の中にスーッとレモンが浸透していった。
眠りかけているはる君は、愛おしくて。
…だけどやっぱり、切なくて。
突然、バサッと音を立てながらはる君の手から本が滑り落ちた。
音に気が付いたらしいはる君が目を覚ました。
「ごめ………歩夢…?」
謝りかけたはる君の言葉が、止まった。


