「おはよ~。あら、どうしたの?」 昼過ぎに起きてきた茜が、こたつで突っ伏している時弥を見下ろす。 「……なんでもない」 酷い夢を見て気分が悪いとは口が裂けても言えなかった。内容が内容なだけに── なんだって、俺が杜斗を襲わなきゃならないんだよ。思い出しただけでもげんなりする。そもそも体格的にいって俺が適う訳ないし、だからって逆の夢も嫌だけど……と訳の解らない思考が頭の中で渦巻いた。 「あ、雪よ」 茜が嬉しそうに窓の外を指さした。立ち上がって窓に近づく。 「え? 雪?」