占い師の恋【完】



難しい顔は変わらないまま、引きつった笑顔を私に向けて返事を返してくれる店長。

私の前にいる男は、素知らぬ顔で明後日の方向を見ているんだと思う。


サングラスの下の瞳はどんな気持ちかよく分からない。


「…杉君。僕には口出す権利とかないし、首は突っ込まないけど。杉君の後悔しないようにね。」

「はい。時間ある内に今を楽しみますよ。」


――何のことだろう…?

店長は真っ直ぐ杉山さんを見据えていて。振り返り店長に向き直る杉山さんの声は酷く嬉しそうだった。


時間ある内に、今を楽しむってどういう意味?
店長のあんな顔だって今まで見たことないし、杉山さんの言葉は……、



「杉山さん、ココ辞めるんですか…?」

「…、ココじゃなくて、占い自体辞めるの。」