「分かんねー。」


そう呟いた男の眉根が一瞬動く。それを捉え、さらに彼をよんでいく。


「その゙大切な何がは、貴方次第で近くにも遠くにもなりますよ。゙大切な何がを見つけたら手離さないことですね。」



あ、数日後に話しかけられる人の話には乗って下さい。貴方が望む人に会えると思います。

――――゙以上です。゙




ぺこり、頭を上品に下げ男の顔を見上げる。そこで思ったこと。

この男の瞳からは、温かさとかそういうモノが感じられない。妙に冷たく人を拒む……、



「嗚呼、そうか。あの冷たさは…」

さっき感じたのは、この男が…

真っ直ぐに男を見据えると、男は小首を傾げた。

「ん?」

「…あんた、人が嫌い、…じゃないな。゙人を好きになろうとしてない゙んだ?」


わざと、語句を強調させながら言ってやった。

――男の笑顔がほんの一瞬怪訝に曇る。



それもすぐ元に戻ったが。男は、今までで一番深く口元に弧を描くと、クツリと笑い言の葉を紡いだ。