「入れてよ。」
「な、何に…。」
「部屋。」
「無理かなあ…と。」
「え。俺確か助けた「珈琲ご馳走させていただきます!」
言ってしまったと思った時には既に遅し…。
妖しすぎる笑みを浮かべて瞳を細め「ありがとう」と。先にアパートの階段を上がり始めているんだから。
後から遅れて階段を駆け上がると部屋の扉と通路を挟むように建ててある手すりに寄りかかって待つ男。
「はーやーくー。」
「…今開けるよ。」
ウルサイ青を後目に鞄の中から鍵を取り出して鍵穴に差し込み開ける。
仕方なくも先に入って扉を開けると、もたれ掛かっていた手すりから体を起こし玄関に足を踏み入れた。
「お邪魔シマス。」
「……どーぞ。」
ばたんと、青の後ろで扉が外の世界との空気を遮断する。
その空気に緊張を覚えてまともに目を合わさずリビングへと向かうため踵を返し。
玄関に胡散臭い笑顔の男を置き去りに部屋の電気のスイッチを付けた。
暗闇に慣れていた目が突然の光を受け入るのに少し時間がかかった。


