にっこにっこ気色悪い程に笑っている青に内心引いてしまう。

同じようにしゃがみ込んだ青は折り曲げた膝に両肘をついて、掌に顎を乗せる。



「奪っちゃった。」

「っ…!」



頭を殴ってやると、この男は


「痛いよ」なんて言って殴られたのに嬉しそうに笑っている…!


ゾクリと背中に走る悪寒は気のせいではない。



マゾだ…!サドを持ち合わせたマゾだああぁぁあああ!!



勢いよく立ち上がり、一人足早に帰路を辿る。


「待ってよ茉希。」

「つ、着いて来ないで。」

「えー。無理。」



こんなやり取りが数十分。

逃げ切ることも言いくるめることも出来るはずがなく。


そのまま私のアパートまで来てしまった。
とりあえず助けてもらったお礼となんだかんだ送ってくれたっぽいからそのお礼を。



「…ありがとう、」


ぼそり。呟くように言って顔を見上げれば……、



綺麗に口に弧を描いた
男が私を見下ろしていた。