「てめえっ…、何しやがんだ!!」
ピアスを支えるように庇い、茶髪が私の前に立つソイツに向かって声を荒げる。
馬鹿にしたようにクツリと喉を転がすようにして笑ったソイツは怯むこともせず言い放つ。
「ソレ俺の台詞。俺がこれから落とそうとしてんのに。勝手に手出されちゃ困るよ。
失せろ。」
次に響いた声は殺気さえも感じさせて。さすがに男達も腰が引けたようでさっさと闇に消えていった。
その場は静粛に包まれ、ソイツはゆっくり振り返った。
端正な顔つきにいつものようなポーカーフェイスは今日は張り付いておらず。どこか怒りを浮かべている。
「…茉希。」
私の名を呼ぶソイツの目は悲しく揺らいでいた。
囁かれた名前は、声は、私の脳を甘く痺れさせてしまうのに時間を費やさない。
「………、青。」
昨日振りのその顔が、とても懐かしく思えた。


