占い師の恋【完】





面倒くさいのに絡まれてしまった…。

周りの人達はジロジロとこの光景を目撃しているはずだし。現に数人と目が合うのだから動かぬ証拠だろう。


けどどの人達も゙見て見ぬフリ゙だ。厄介事には巻き込まれたくないのだろう、かち合った視線は呆気なく逸らされる。

助けを周りに頼むことは無理そうだと理解して。拳を握る。



殴って怯ませている間に逃げてしまえるか…、


一か八かの賭けに出ようとした




その瞬間。


「っ…!ぐっ…、」



風を切るように突如として私の前に重なった影は男の腹部に蹴りを入れた。

掴まれていた腕は離され男がよろけたのが分かる。



「女口説くならもうちょっとやり方ってもんがあるんじゃねーの?」




口調は違う。いつもの優しさも全くと言って良いほど含まない。

恐ろしいほど低く威圧的だがどこか挑発的。


この声を聞くと、胸が張り詰めて苦しくて…、知りたくない感情が押し寄せて来る感覚に陥ってしまう。