「茉希、俺と勝負したトキに俺が大きい何かから逃げてるって言ってたよね。」
「…、うん。」
「あれ、当たってた。」
「…。」
青は真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに私を射抜くように見つめると
「俺は逃げたんだ。」
静かに告げた。
この場の空気が一気に重いものへと変わり、息を飲む。胸が変な鼓動を打ち冷や汗が背中を流れたのが分かる。
ドクン、ドクン……
変な緊張で吐き気までこみ上げてきた。
「俺ね。言っちゃえば金持ちの家なワケ。まあ、中高と金に困るわけもなく遊んで過ごしてたんだけど。
それって結局は遊ばせてやる代わりに、親父の仕事継げってことで。
この歳になるとさすがに家に縛られんのが嫌になった。」
「(金持ち…ってなワケとか。うざい。)」
「兄貴は俺より先に家出て、最近までずっと会ってなかった。
茉希、あの時に話しかけられた人の話にのったら会いたい人に会えるとも言ったよね。」
「そう、だね」と詰まりながら返事した私から一度目を逸らすがすぐに私の瞳をもう一度捕らえ
「あれ、多分茉希の店の店長。話のってたら、兄貴が来たんだ。」


