そう思うなら離れればいいじゃん。別に恋とかしてないし、今なら後腐れとか無く離れられるじゃん。

それを実行に移せ、って……脳は指令を出すのに。


馬鹿な私の体は全くもって言うことを聞かない。

やっぱ、風見さんが言ってたように私は正真正銘ホンモノの馬鹿であるようだ。


゙聞いてしまったら、どうなるの?゙


なんて変なことばっかり考える脳に腹が立つ。
…、違うな。今の訂正。青のことに敏感になる思考とか、全部全部。

青を完璧に受け入れてる自分に自嘲的とも取れる笑いが零れ落ちた。



「…、別にいい。」

「本当に?知りたそうな顔してるけど。」

「自意識過剰。」

「どうだろーね。」


耳に入ったのは疑いを含む言葉を発した後の、くつりと喉の奥を転がしたような…。楽しくて仕方がないような、そんな笑い。


何が可笑しいと言わんばかりに目の前の男を睨みつけると、さらに深く口元に弧を描く。

その姿はあまりに美しく妖艶で。



ごくりと私の喉を鳴らす音だけが、寂しく路地裏に響いた。