「まき……、」
今すぐにでもこの空気に溶けて消えちゃいそうな程小さくて、か弱い青の声が私を呼ぶ。
「茉希…俺…、」
「っ…、」
風見さんに引っ張られるがまま青の横を通り過ぎようとしたとき、掴まれていないもう片方の手首を冷たい青の手が包んだ。
捕まれたことで足が止まってしまった私につられて歩く足を止めた風見さん。怪訝な顔で私を見てくるから、ちょっと腹が立つ。
「何してんだ…。」
「いや、私ってか…、」
「お前じゃねぇよ。
青、離せ。」
どうやら怪訝な顔も苛ついた声も私ではなく青へと向けられたものらしく。なら私を睨むのはヤメテ欲しい。
「無理。」
「肩はずしてやろうか?」
「それは嫌だなあ。俺、茉希と話がしたいんだけど。」
「話だあ…?」
さっきまでのあの弱々しい青は何処へ?もう青は風見さんにあの笑顔を向けて話している。
何?こいつ何者?
役者か、芸人か。取りあえず…前から思ってたけども!胡散臭いのに変わりはない。
「おい。」
「………、え。私?」
「お前以外に誰がいる。」
「いやいやいや。名前呼ばれないと分からないから!!」
「うるせぇ。で、どうすんだ。」


