安藤の家までは歩いて30分足らず。

その間、俺はずっと益体のない話を喋り続けた。

安藤が居心地悪く思わないように。

そんなことで俺がつけた傷を帳消しに出来るとは思わないが、これ以上悲しませないように。



「・・・ゴメンね梓クン。」



安藤の家が見えるところまで来て、それまでずっと俯いて俺の一方的な話を聞いているだけだった安藤がポツリと言った。




「梓クンは優しいから・・・・私、一杯迷惑掛けて・・・・一杯気を使わせちゃって・・・・」



何で安藤が謝るんだよ?

俺は優しくなんて全然なかっただろ?


差し出された手に鞄を渡しながら、非常に複雑な思いで押し黙っていると、安藤が意を決したように顔を上げた。



「あのね。・・・・あのね、もう一度だけシフォンケーキ、挑戦してみていいかな?

・・・そしたらもう、終わりにする。ちゃんと諦めるから。」