うっわーっっ!

俺は今何をしようとした?


肋骨を打ち破りそうなほどバクバクなっている心臓を無理矢理押さえつける。


ヤバイ。マジで。
雰囲気に思いっきり流された。


安藤も、綾人が好きなくせに何流されてんだよ、馬鹿。



「あれ~?何か珍しいオンナノコの靴があると思ったら、シホちゃんかぁ。」


リビングにひょっこり現れた綾人は安藤にニッコリと王子様スマイルを寄こす。


てか、いきなりシホちゃん呼ばわりは何でだよ?
一度口をきいたらお友達ってか?
・・・馴れ馴れしい。


綾人が図々しいのはいつものことなのに、なんだか無性にイラつく。


「なんか甘い匂いがするんだけど、早速シュークリーム作ってくれたんだ。ありがとう。で、別にいいんだけど、何でウチで作ってんの?」

「オマエが強請るからだろ!せめて場所を提供するぐらい当然じゃねーか。」

「ふうん?アズお墨付きのシホちゃんレシピを伝授してもらうためかと思った。」

「・・・・・・・・・・それも、ある。」


現実には俺がご口授しているわけだが。



「ま、とっくり教えてもらいなよ。特にシホちゃん秘伝の隠し味なんかをね。楽しみ。」




ヒデンのカクシアジィィ~?




ルンルンと鼻歌を歌いながら踵を返した綾人が思い出したように振り返る。



「で、何で二人ともそんなに顔が赤いわけ?」



っ!

「とっとと着替えて来い!もう出来るから!」


俺の罵声に綾人はオーバーリアクション気味にひゃっと首を竦め、自室へ向かった。


「・・・安藤、後クリーム入れて完成させろよ。俺は片付けしとくから。」

「う、うん。」

非常にぎこちなく微妙な雰囲気で俺達はそれぞれの仕事に従事した。