俺、友坂梓は家に辿り着くなり、リビングのソファーに座り厳しい顔でテーブルの物を見詰め続けた。

かれこれ30分。



「って、どう考えてもコレって、綾人のだよなぁ・・・」




口から洩れた溜息は自分の想像以上に重く深かった。





日直だった俺は不運にも下校間際に先生に用事を仰せ付かって、職員室まで行く羽目になった。


帰ってくると教室には誰の姿もなく、机に俺の鞄と綾人の鞄が残されているだけだった。

約束はしていないが、タイミングが合えば一緒に帰ろうという意思表示だろう。

だが、暫く待っても綾人がもどってくる気配はなく、俺は一人で先に帰ることにした。



異変に気づいたのは鞄を持ち上げた時だ。

殆ど何も入っていないはずのディバックに覚えのない重みを感じて、中を改める。

すると、綺麗にラッピングされたケーキの箱が目に飛び込んできた。




リボンのところにメッセージカードが挟まれていて、丁寧なしっかりした筆跡で



『安藤紫穂』



と書かれていた。






アンドウシホ?




一瞬まさかと疑ってみたが、その模範的な文字に読み間違いなどあるはずもない。

呆然と立ち尽くす俺の耳に廊下を歩く人の足音が聞こえてきた。

悪いことなど何もしていないが、動揺した俺はとっさにケーキをバックに仕舞って、慌てて教室から飛び出していた。