花岡駅は、会社の最寄りから3駅で、心の準備が整わないうちに到着してしまった。

18時20分

もう何人か来てるのかな。

体全体が心臓になったみたいな感覚に陥った。

緊張、するな。

息吸えてるよね、なんて当たり前のことすら分からなくなる。

改札を通る前に、ちらっと見えた売店脇の姿見に写った自分の姿をもう一度確認する。

もしかしたら気付かれないかも、なんて思った。

それくらい自分でも思うほどに、私は変わった。

変わらないとやっていけなかったんだ。

「もしかして、片桐さん?」

完全に自分だけの世界に入っていた私を現実に引き戻したのは、私の名前を呼ぶ声だった。

「あ、やっぱり。」

そう言って笑った顔に、3年前の記憶が蘇る。