「はい」
「あ、ありがとう、ゴザイマス……」
「……ちょっと、デコ、見せてみ。やたら赤くなってる……」
怪訝そうに呟き、先輩が私に本を渡すついでにしゃがみこんで、私と同じ目線になった。
違うんです、赤いのはきっとそうゆうわけじゃないんです!
ひょいと先輩が大きな手で私の前髪をあげた。心臓が跳ね上がる。
「あれ」
何かに気付いたかのように、先輩が切れ長の目を少し丸くした。
「大島の、後輩の、友達?」
「……っ!!あ、あの、はい……」
覚えてた!私の声は上ずって震えている。
一体何にどきどきしていいのかわからない。
そんなことどうでもいいくらいに私は倒れる寸前だった。
パッと私のおでこから手を離すと、こらえきれなくなったように先輩は笑った。
……笑った。
私と先輩しかいないこの図書室で。
「昨日の子か。昨日といい今日といい……本当変な奴……」
くすくす笑う。私は口をパクパクさせた。今ここで起こっている事は現実だろうか?
「あっ…あの…」
「あ、大丈夫みたいだよ、おでこ」
「ほぇっ?」
「今日は走って逃げないの?」
からかうような口調。
また熱があがっちゃうよ……。私はやっと立ち上がった。
「ほんと、すみませんでしたっ!私帰ります!」
「走って?」
まだ笑ってる……。
昨日とは違った笑顔。
あからさまにからかわれているのに、
私の想いのボルテージは今この瞬間に留まることを知らないくらいに上がり続けていた。


