彼は男の子を抱えると、柵を華麗に飛び越え、通りにでました
「どこいくの、ピエロさん。
こんな時間に外にでたら、怒られちゃうよ…!」
『大丈夫、怒られませんよ。
きっと…、ね。』
彼はそれから一度も口を開くことなく、夜の町を走り続けました
たどり着いたのは大きなテント、それはあの、サーカスのテントでした
『ようこそ、夜のサーカスへ、最後の一人の坊ちゃん。』
「最後の一人?」
『えぇ、外の方々は昨晩到着してますよ。
はて、どうしてでしょうね?
君が私の音色に惑わされなかったのは。』
彼は無表情にカクン、と首を傾げます
「どうしたのピエロさん…?
なんだか…怖いよ。」
『安心して下さい、なにもしません。
ことは、明日ですね。
さぁ、今夜は寝なさい、私のテントで。
貴方の沢山の仲間たちが、奥の方で待っていますよ。』

