赤い夜のサーカス




「お母さんが…いなくなったの。」

彼は男の子をみて、頭をぽんぽんと二度撫でました


『大丈夫ですよ。
必ず見つかります。
さぁ、私の肩に乗って。』

ぐんっ、と男の子を抱き上げ、彼の肩に乗せると大きな声で話しはじめました


『お母さーん!
この子のお母さんはいらっしゃいますかー?』

彼はいわしの群れをものともせずに、スルスルと間を駆けます

いつの間にか男の子の涙も止まっていました


「あなた、そこのあなた!!」

数分駆け巡った後、誰かが彼に駆け寄ってきます

「お母さん!!」


不安そうだった男の子の表情がたちまち安堵の色に染まりました

「ありがとうございますっ…!」

母はペコペコと何度も彼に頭を下げます

『いえいえ、綺麗な奥さん。
見つかってなにより。
しかし、もう目を話してはいけませんよ?』

彼は微笑むと男の子を肩からゆっくりと下ろし、いわしの群れの中に消えていきました