Fahrenheit -華氏- Ⅱ


嫉妬の域を超越した、羨望の域に居る彼女に見惚れて……いる場合じゃない。


「Nice to meet you.(はじめまして~)瑠華の友達の心音です」と心音はにこにこ紫利さんに笑いかけていて


「あら、はじめまして」と紫利さんはどこか楽しそうに手を合わせた。その節に気付いたのだろう左手薬指の輝くダイヤモンドを


「Mrs?」と心音が目をまばたき


「Yeah.(そうよ)」とあたしは短く答え、紫利さんとの関係は……深くは言えなかったけれど心音はそれ以上突っ込んでこなかったことにちょっとほっとした。


そして即席とは言え、これは…女子会と言うのかしら。初めての体験だ。


大将はどういった経過か女三人がうまくまとまってくれてほっとしたようで、いそいそと座敷を案内してくれる。


座敷席は四人掛けのテーブルが二席と言う決して広くない場所だった。


声の感じから何となく想像はできていたけれど、私たちの隣には三人の若い男性がいて、テーブルの上には食事の皿が溢れん程並べられていた。しかしそのどれもが中途半端に食べ残っている。テーブルの端には瓶ビールの空瓶が数本。正直言って行儀が良いとは言えない。


「何にします?」


とあたしと心音に新しいおしぼりを差し出してくれた大将が聞いてくれて


「あ、じゃぁ生を。心音もそれでいいよね」と一応聞くと


「Yeah,ぬるめでお願い」と大将にウィンク。大将は珍種を見るような目つきで目をまばたき、下がっていった。


「瑠華ちゃんのニューヨークでのお友達?」と紫利さんが心音を見て興味深そうに聞いてきた。


「ええ、幼馴染みたいなもので」と説明すると


「羨ましいわ」と微笑ましい何かを見るような目つきでおっとりと微笑まれ、微笑さえ―――こんな様になっているひとは初めてだ、と改めて気付かされたけれど、さらに


「私もね、幼馴染と言うか妹みたいな感じな子がいるの、妹じゃないけれどね、今度紹介させて?」と気さくに言われてあたしは慌てて頷いた。


これは―――あたしを彼女の懐に入れてくれる、と言うありがたい申し出なのだ。