Fahrenheit -華氏- Ⅱ


菅井さんと飲みはじめてから、二時間と言う時間が経っていた。時間は23時近くだ。


あまり長居するつもりは無かったのに、つい話し込んでしまった。菅井さんが思いのほか良い人!だったからな。一緒に飲んでて楽しいし。


しかも飲み方がきれいだ。強い酒を結構飲んだのに一切の乱れなし。終始穏やかな雰囲気で、しかし会話は面白い。話上手だし、聞き上手だ。


裕二や綾子と飲んだら終始バカにされっぱなしだし、佐々木は早々につぶれて話どころじゃないし、桐島はマイペース過ぎて独特のペースについていけない時があるし、


そう考えたら飲み友だったら菅井さんは最高ランクだ。


あっという間に時間が過ぎ、それぞれここから交通機関で帰るわけだし、明日もあると言うことで何となくお開きになり、しかし会計時にちょっと揉めた。


菅井さんは飲み代を割り勘にしようと言い出したが、勝手に高い酒を入れたのは俺だから俺が払うと言うと、彼はそれを頑なに断った。


何かこのやりとり、以前にもあったような……


そうだ!瑠華とはじめて飲んだときだ。あれは確か……彼女の歓迎会のときだったか。


ホント、菅井さんて瑠華に似てる。(人懐っこいところ以外)


結局レジカウンターの前で互いに出した財布を引かないと言うことが五分程続き、ようやく菅井さんが引いた。


「じゃぁ次は僕が出します。出しますからね」


と念を押されて、「分かりました。そのときはお願いします」と言って俺は苦笑い。


でも、『次』が果たしてあるのだろうか。今回の飲みだって突然俺が誘ったわけだし、事情があったからで。


でも


「楽しかったです。僕の周りはあまり酒が強いヤツが少なくて、男同士……女の人が居ないときに腹を割って話せるのって、結構いいですよね」


菅井さんは爽やかに笑った。その笑顔が心からそう思ってくれているようで嬉しかった。


「いつでもお付き合いしますよ。俺も酒好きなんで」


「じゃぁ遠慮なく、お誘いしますね」


そう言って俺たちは店の前で別れた。