Fahrenheit -華氏- Ⅱ


そこから会話はくだけて、菅井さんは俺たちのことをあれこれ聞いてきた。探りを入れると言うよりも、ただ単に興味がある程度なぐらいだったから、こちらも構える必要はない。


「あるじゃないですか、すっごい美女が付き合ってる相手は結構かっこよくなかったり、とか。


僕と満羽が良い例ですよ。ほら、美女と野獣みたいな?」


菅井さんはカラカラ笑う。


いや、菅井さんはふつーに好青年スよ。俺の周りで唯一『まとも』と言える男だ。


考えたら俺、“元”遊び人の裕二に、年齢=彼女居ない歴の童貞佐々木に、爽やかなのに腹黒クロキリ(桐島)に……(自分も含め)まともなヤツいねー!


「菅井さんは俺のこと過剰評価してくれますけど、俺が言うのもなんですが、俺って結構ダメ人間ですよ。柏木さんには怒られっぱなしです」


「そうなんですか、それも意外な感じがしますね。あの方何か淡々とされてて、何事にも冷静そうなんですが。逆に怒ってるところとか想像つかないです。何て言うか、『何でそんなことで怒ってるの?』とか言ってそうで、冷めてる??みたいな感じで…すみません、良く知りもせず…」


「いえ!淡々……冷静……冷めてる…まぁ当たってるっちゃ当たってますが……


俺、彼女に出逢ってから気づいたんです」


俺は真剣な顔で菅井さんに向き直った。


「真実の愛ってものにですか?」と菅井さんは微笑ましい何かを見るような目つきでうっすら笑った。


「いえ。


俺、実はドMだったってことに」