Fahrenheit -華氏- Ⅱ


いくつかの薄いファイルを抱えてエレベーターを待っていると、またも疫病神出現。


「部長!」


姿が見えないと思っていた二村が喫煙室からひょっこり顔を出し俺を呼び止める。


次から次へと…


「何だよ、俺は今猛烈に機嫌が悪いんだ。喧嘩吹っ掛けるなら後にしてくれ」


二村の本性を知った今、取り繕う必要はない。苛立ちを隠そうともせず、エレベーターの到達を待っていると


「さっき柏木さんの友達の人に会いました!」


あー……心音ちゃんと出くわしたか。まぁ、見た目だけなら極上だからな。二村が目を付けるのも分からんでもないが。


だが二村は違った意味で興奮(?)してるようで


「俺、びっくりしました!だって“あの”マーズフェイス”の創立者ですよ!」


二村の意外な言葉に俺はエレベーターの位置が点灯しているランプから目を離し、思わず二村の顔を見た。


「お前……彼女の会社知ってンの?」


二村は見たことのない無邪気な笑顔を浮かべて、手振り身振りで


「もちろんですよ!!俺!あのゲーム会社の大ファンなんですよ~!!もっと色々話聞きたいんですけど、席を設けてくれませんかね!」


二村は顏の前で拝む仕草。


二村が心音ちゃんのゲームのファン??ちょっと意外な気がしたが、だが俺の夢に出てきた二村はシロアリ緑川とマドレーヌ瑞野さんのことを「ゲーム」と言っていたから、まぁ頷ける部分もあるが。いや、所詮は夢だけどね…


「もうホントあのゲーム会社のゲーム、マジで好きで!」と二村は相当心音ちゃんのゲームが好きなんだろうな、聞いたことのないような熱弁に俺の方がちょっと驚きだ。二村の熱弁と言う圧に、俺の方が若干引き腰。


いつもはこいつが何をしても何を発言しても憎ったらしさしかないが、今の二村は純粋に心音ちゃんのゲームに熱烈な愛を感じる。そこまで夢中になれる何かがあるって


ちょっと羨ましいぜ。