Fahrenheit -華氏- Ⅱ



瑠華が俺に対して「不安」になることはないと思う。気持ちを量りで計るつもりはないけど、でもやはり俺の方が瑠華のことを好きだと思う。度合が違うと思う。


そんな暗い考えを浮かべるだけで嫌気が差しそうだが、この事実だけはいつまで経ってもきっと続くのだろう。


瑠華が心底愛して、愛し抜いた“形”を奪われ、今も尚彼女の中に強烈な存在として君臨している“そいつ”


知りたいが、知りたくない。


瑠華を好きになって、一体どれだけこの感情と向き合ってきただろう。いい加減うんざりする。堂々巡りだ。


小さく吐息をついて、何となく前のページに戻る。


mar【他動】/〔完全さを〕損なう/ 台無しにする


と言う単語に目が行き、何となく……心音ちゃんの顔が脳裏に過った。


マーズ フェイス…って言ったっけ…


俺は辞書を閉じ、PCに向き直った。インターネットを開いて、検索項目の欄に「マーズだから、『Mar』に続く文字は“s”?」と独り言を漏らしながら、入力していたときだった。


俺の電話に内線電話が掛かってきた。


ナンバーを確認すると、本日二回目の受付からの電話で、


「今度は何?心音ちゃんが帰るとき、また何かやらかした?」と若干うんざり気味で電話を取ると、



『セントラル紡績の菅井様がいらっしゃっています』



とのこと。


俺、今日マジで厄日かも……