Fahrenheit -華氏- Ⅱ


と、まぁ佐々木の憎まれ口を聞きながら…まぁ一々気にしてないけどね。そう思われて当然のこと、こいつはたくさん知ってるワケで。


一種のコミュニケーションだよな。そんなこんなで心音ちゃんのことは考えないようにして、俺はやりかけの受注生産の納品書を作成することに。


しかし受注生産だし、本国(この場合、アメリカ)だからな。最近俺は少しだけ英語でやりとりできるようになったけど、聞くのと書く読むはまた違う。


商品の詳細を間違えるわけにはいかないから、俺は英和辞書と、更には既存の商品のカタログと睨めっこ。


それも数分でダウン。だって英和辞書って(当然だけど)字がちっちゃいんだもん。疲れる疲れる。カタログだって当然全部英語だし、アルファベットや数字の一字違いで、大変な誤発注になるしな。


やっぱ瑠華を頼るしかない……あ~早く帰ってきて!瑠華ちゃ~~~ん!!


と、嘆きながら身が入らない面持ちでパラパラと辞書をめくる。


そんな中で『M』のスペルが目に入った。




max:【主な意味】上限に達する;最大値に達する。俗語
【音節】max【発音記号】読み方/mˈæks(米国英語)/




ページを開いて、「何やってんだ俺……」と、がくりと肩を落とす。


こんなことしてもマックスのこと知れるわけないのに。でも知りたい、と思う。


瑠華もこんな風に……俺の背景に居る真咲のこと知りたいと―――強く願うのだろうか。


いや、俺程でもないよな。真咲の存在を知って多少(?)怒ってはいたものの、彼女は「信じる」と言った。


そう言ってくれて正直ほっとしたが、俺は―――……?俺は、瑠華の言う「信じる」ことが、いつまでも出来そうにない。


何故、文字を見ただけでこんなに不安になるんだろう。嫉妬とかの類じゃない、そう、それは


言い知れぬ『不安』


なんだ。