Fahrenheit -華氏- Ⅱ


瑠華が心音ちゃんと会議室に向かってから、五分と経たない内だった。ほとんど入れ違いに、空席だった隣の部署の陰険村木の一団がぞろぞろ戻ってきた。


その中に、二村の姿が無かったが、あまり気にする余裕がなかった。


俺の頭の中では、心音ちゃんの意味深な笑顔が張り付いて離れないからだ。


何故、俺の会社に―――……


心音ちゃんは「俺の会社に単に興味があった」と言っていた。顧客の新規開拓が目的とも言ってたな。それに瑠華の話からすると心音ちゃんの行動は予測不可能みたいだしな、瑠華だってびっくりしていたし。


でも


どこか負に落ちない。


瑠華は、心音ちゃんが俺と似ていると言った。つまり俺だったら意味のない行動を起こすことはない。心音ちゃんがどうゆう営業スタイルを取っているのか分からないが、顧客獲得の為にわざわざ会社まで出向いてまでの必死感とかそうゆうものも感じられないし。そもそもその手の話だったら最初から言ってくれればこちらだって段取りを踏めた。


他に何か目的があって―――……?


でも、俺の会社に何の目的があるって言うんだ。


「分かんね……」


デスクのPCを睨みながら腕を組み、口元に手を当ててると


「何が分からないんですか。柏木さんならすぐに帰ってきますよ。分からないことがあったら柏木さんに聞けばどうです?」


あのー……佐々木クン??俺、こー見えて一応ここの「長」なんデスけど。


分かってるケドね。今更だけどネ。


俺は『部長』であって、どうやらその威厳に欠けるらしい。俺が唯一信頼して引っ張ってきた佐々木でさえ、付き合いの長い俺より瑠華に頼ってるフシがあるからな。


「でも、すっごい美人でしたね~尾藤さん、流石、柏木さんのお友達なだけありますよね。


何かこう、ホンモノのセレブ!って感じで」


佐々木は心音ちゃんの印象がよっぽど強烈だったのか、ちょっと楽しそうにして書類をまとめている。美人でスタイル抜群。確かに目の保養にはなるよな。話し方ちょっとチャラいケド(←俺が言うな、って感じだけど)きっと……いや、絶対ああ見えて凄く頭は良いだろうし。


「まぁ類は友を呼ぶ、って言うからな」


「ホントにそうですよね」佐々木は含みのある物言いで、俺を白い目で見てくる。


おい!佐々木っ!!その視線は何だ!!確かに俺の周り……って言うかほとんど裕二しか最近つるんでないけど、『遊び人の似非セレブ』呼ばわりされた気がするし!!