Fahrenheit -華氏- Ⅱ


USBを一応は受け取った。インストール自体はそれほど時間が掛からない。


ただし最低でもオークションの前日までにインストールが完了していないといけないのだ。


簡単な作業だ。ポータブルに差し込むだけで、あとは促されるまま手順を踏んでインストールしてくれる。


あたしの手の中に、今“神流グループ”の運命が託されてると思うと、手が震えた。それと同時に力が籠る。


「I get it.(分かったわ)Well, I guess I will manage it somehow. (何とかやってみせる)」


あたしの決意に心音は何も返さなかった。ただ微笑んで、あたしの手の中のUSBメモリをしっかりと握らせる。


「You will be just fine. (大丈夫。絶対に上手くいく)」





「I trust you.(信じてる)」





心音の手を握り返して、


「OK.Formal story so far.(堅苦しい話はここまで)Go home.(あたしは帰るわ)


I am through with my business.
(用は済んだしね)」


「Go home?You go home quietly?(帰るって、大人しく?)」


皮肉を込めてちょっと眉根を寄せ笑ってみせると、心音は悪戯っ子のようにウィンク。


「It’s troublesome if I stay here, isn’t it?(あたしが居ると何かと面倒でしょう?)Light out.(退散するとするわ)」


心音は軽口を返してあたしの両手を再び握り、当たり前のように両頬にキス。


「Catch you later.(じゃぁね、帰りを待ってるわ)」


「OK.Go home as soon as possible.(なるべく早く帰る)」


あたしは心音にマンションのキーを放り寄越して、心音はそれを空中でキャッチ。


「Don't work too hard.(仕事頑張ってね)」


「Thanks.Bye.see you.(ありがと、またあとでね)」