Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「コソコソするのはあなたの方が得意分野ではありませんか?


会議室の使用欄に部署名と名前が記載されていませんでしたが」


腕を組んであたしなりに威嚇したつもりで彼を睨むと、


「今日の柏木さん不機嫌?もしかしてアレの日……」


と、何故か心音に同意を求める二村さん。


「I don't know.(さぁ?)瑠華はいつもあんな感じよ。まだましな方じゃない?」心音は律儀に二村さんに返事をして肩を竦める。


「二村さん、それは…」言いかけたところで


「はい!セクハラですよね!!すみませんでした~!!!」と素直に頭を下げる二村さん。


その拍子に肩に掛けていた心音のFENDIのバッグに軽くぶつかった。マスタード色のバッグが床に落ち中身がほんの少し散らばった。


「あ!すみません!」


二村さんは屈んで慌てて散らばった中身を拾い集めている。心音も同じようにしゃがみ込みバッグの中身を拾う。


普段は持ち歩かないだろう、心音の会社『Mars face』の名刺が一枚飛び出ていて、偶然か、はたまたそうじゃないのか二村さんはその名刺をしげしげ。


「『MARS face……CEO Cocone Bitou』?」二村さんが名刺を読み上げ、大きな目をさらに開いた。純粋に、驚いているようだった。


「マーズフェイスって、あの!!『ブラックルーズ』のゲームの!!?」


二村さんはいっそ興奮と言った感じで心音に勢い込む。


この反応にはちょっとびっくりした。けれど心音は


「Yes♪“Black loose”は私が創ったゲーム♪プレイヤーなの?」


と、嬉しそうに破顔。


あたしは心音がどんなゲームを創ってるのか知らなかったし、もちろん『Black loose』なんて知らない。


「俺!めちゃめちゃハマって寝る間も惜しんでゲームしてたんです!!」


「Oh♪それは嬉しいわ~♪まさかこんなところでユーザーに会えるなんて、運命かしらね」と心音は心から楽しそう。