Fahrenheit -華氏- Ⅱ


あたしたちは無言で“第二”会議室に向かうと、第一会議室から、村木さんをはじめとする物流管理本部の社員たちがぞろぞろと出てきた。


内藤チーフに……


二村さんも―――


ビンゴ


「あら、柏木さん。お疲れ様です」と内藤チーフから、いつもと変わらないおっとりとした挨拶で声を掛けられあたしは「お疲れ様です」と返した。


心音の存在には、村木さんや内藤チーフはそれ程興味がないのか、村木さんに関しては


「お疲れ様です」と不愛想に、それでも一応は挨拶を交わしてあたしの横を見ずもせず、さっさと通り抜けて行く。


どうやら村木さんは、彼から言わすと“こざかしい小娘”が引き連れてる“来客”なんて興味がないようだ。


彼の無関心……と言うかあたしたちの不仲(?)まぁあたしはそれ程気にしてはいないけれど、たぶん向こうが一方的に嫌ってるフシはあるわよね。


でも、そのおかげでちょっと救われた気がした。


問題は―――


「わ!柏木さん、お客さんですか~♪すっごい美人ッスね!!」


と、最後に出てきた二村さんがあたしの背後に立った心音に目配せして、似非クサイ笑顔でにっこり。


「Hi♪はじめまして~♪」と心音は二村さんのリップサービスに機嫌を直したようで、にこにこ言って手を振る。


「Is this man Mr. Nimura?(これがミスターニムラ?)It's cute!(可愛い坊やだこと)」こそっとあたしに耳打ちしてきて


「Only the face is cute.(顏だけね)」と、小声で答えて、一秒でも早く会議室に入りたい様子を装ってあたしはせっかちに扉のドアノブに手を掛けた。


けれど


「何、内緒話してるんですか~♪♪こそこそと怪しいな~」と、二村さんがその行く手を阻む。他意はないだろう。彼は誰に対してもこんな感じで人懐っこいから。


前はね。


そう思ってやり過ごしていたわよ。