Fahrenheit -華氏- Ⅱ


北参道エリアに入ってから緑川さんは携帯のURLを見ながら運転手さんにナビをして、到着した店は裏通りに面している小洒落たカフェだった。


いかにもSNS映えしそうなスタイリッシュな外観の内装は同じくスタイリッシュで全体的にシャープなテーブルや調度品が品良く並べられている。


「素敵なお店ですね。何でお知りに?」と聞くと


「インターネットで調べました。実はあたしも入るのは初めてで」と緑川さんが小さく俯く。確かにここならば会社から離れているし、しかも裏通りだ。社員の誰かと出くわすと言う可能性は低い。


店内は意外にも閑散としていて、あたしたちと同じ年代の同じく会社帰りと思われる女性客や、いかにも待ち合わせ的な女性客がちらほら居るだけだった。


テーブルに案内されてメニュー表を見ると、ずらりと紅茶の種類が並んでいた。紅茶がうりのカフェのようだ。


紅茶は種類が多すぎて何が良いのか分からず(と言うか選ぶのが面倒)、結局あたしはホットコーヒーを頼むことに。緑川さんはいかにも適当に選んだと言う感じで「ストロベリーフレーバーのミルクティー」を頼んだ。


互いの飲み物が来るまで、お互い口を開くことはなかった。


ただ沈黙の中、身を置いて、緑川さんはずっと俯いたまま、花柄プリントのスカートの膝の上できゅっと手を握っていて、その姿を真正面から見据える、と言う形のあたしたち二人は傍から見たらどういった関係に見えるのか、ちょっと気になった。


やがて飲み物が来てちょっとほっとした気がする。コーヒーカップに口を付ければ無駄に喋る必要性もないしタイミングを切り出せる気がした。


緑川さんも同じくお洒落なカップに入った紅茶を一口飲むと、意を決したように口を開いた。


緑川さんの頼んだストロベリーフレーバーのミルクティーから甘い香りが漂ってきたが、話の内容はその甘さとはほど遠いものだった。