「ほら、ここ。結構雰囲気いいでしょ?」
俺がスマホの画面を瑞野さんに見せると、彼女はちょっと身を乗り出して画面を覗き見る。
急に縮まった距離に、意味もなくドキリとした。良い意味でのドキリじゃなく、悪い意味でのドキだな。
瑞野さんから香ってきたのは、花のような……香水だろうな、きっと。いかにも若い子が好みそうなちょっとヴァニラも混じっている。
だが瑞野さんは俺の心情を知ってか知らずか、マイペースに店の情報に夢中だ。そこに他意もなさそうだ。
でもこの動作って、狙ってる男どもからしたらちょっと勘違いしちゃうような距離だよな~……
ま、本人無自覚っぽいけど。その点瑠華はパーソナルスペースが狭い……と言うか人を寄せ付けないオーラを放ってるから、その点ではちょっと安心だけど。でも二村はな~……本命がこれじゃちょっと心配だよな……
なんて考えながら鯖を口に入れてると
「ホントだ。素敵なお店ですね」
出し抜けににっこり微笑まれて、俺は鯖を喉に詰まらせそうになった。
脂が乗ってなくてやたらパサパサした食感だったからな、余計だ。やっぱ想像通りの味。
慌てて携帯を瑞野さんに手渡し、お茶を喉に通す。
「ちょっと場所が遠いからサ、瑞野さんがこっちの方来てくれたら綾子にタクシー拾わせるから、二人で相乗りしなよ」
もちろん、タクシー代は綾子が出すし。
と言うちゃっかりした発言に、瑞野さんはブンブン手を横に振った。
「いえ、子供じゃないですし一人で行けます」
「あ、そーいえば店は割とアルコール中心なんだけど、瑞野さん酒って飲める?」
俺は何でもないように言って、できるだけ世間話のように聞こえるような気軽な感じで問いかけた。



