Fahrenheit -華氏- Ⅱ


軽く探りを入れる程度……のつもりが、


カウンターでA定食の鯖味噌セットを受け取り、その後を慌てた様子で瑞野さんが追いかけてきた。


「…部長!」と呼ばれて振り返る。


因みに彼女の手の中にある食券はカレースパゲッティで、パスタ類の受け取りは俺の定食類受け取り口のだいぶ手前だ。だが彼女が手にしたトレーの上には何も乗っていない。


ちょっと不思議に思って首を傾げるも


「…もしかして、社食利用するのはじめて?」と聞くと


「はい。どこで何を受け取ったらいいのか分からなくて……」と素直に言って恥ずかしそうに顏を赤くして俯く瑞野さん。


う゛~ん…前の俺なら速攻で口説き……いやいや、逆に?面倒くさくなるパターンかもしれないから様子見かもしれないけど


雰囲気とか何気に瑠華と似てるから、何か妙に可愛く見える。


例え瑠華と瑞野さんが同じ立場であっても、瑠華は俺を頼ることはないだろう。……言ってて悲しくなってきたぜ……クスン


「パスタ類の受け取り口はあっちだよ。スプーンとフォークもセルフサービスで全部自分で取るの。置き場はあそこ。お茶と水は無料だけど、あっちにコーヒーも飲める自販機あるから」


俺は一通り説明をして、言うだけ言ったら俺の方は満足。


て言うか綾子、お前がしっかり教えてやれよ!とちょっと心の中で綾子に当たったり。


そんなこんなで定食を乗せたトレーを運んで、出来るだけ人が少なそうな場所を選んで席に落ち着いたのは、休憩を入って10分も経っていた。


30分以内で終わらせたい俺はすぐに箸を手にしたが


カタン……


小さく音がして顏を上げると、目の前の席に瑞野さんが座ろうとしていた。


俺は思わず辺りをキョロキョロ。


だって、他に席はいっぱい開いてるのに……何故にここ??