「俺からも質問していい?」
ふと、何故だかここになってちょっとした疑問。
「What?」心音ちゃんは興味深そうに、ソファの背に両肘を置くとわくわくと目を輝かせて俺を見上げている。
「心音ちゃんて本名?」
心音ちゃんは俺の質問に、若干がっかりしたような表情を浮かべ軽く肩を竦める。
「本名よ。偽名名乗ってどうするのよ」
まぁ、確かに……
「でも心音ちゃんの漢字、瑠華から聞いてるけど日本語だと『しんおん』とも取れるよね。ちょっと凄い……じゃなくて変わった名前だな~って思って」
「良く言われるわ」心音ちゃんは慣れたもので、再び肩を竦めると
「あたしね、両親の顏を知らないの。
生まれたばかりのとき、修道院の前に捨てられてて―――」
え―――……?
俺は目を開いた。瑠華からそんなこと聞いてない……ってまぁ、人の暗い過去を幾ら恋人だからって軽く言いふらすような人じゃないよな、彼女も。
マズイこと聞いちまった―――
俺は地雷を踏んだことに間違いがなかったから、何か答えなきゃいけなかったものの、心音ちゃんにとっては大したことじゃないらしく、ちょっと皮肉そうに笑って続ける。
「その修道院のシスターがね、あたしを見つけたんだけど
毛布に包まれてたあたしは
息をしてなかったんだって」
え―――………



