開いた口が塞がらない、と言うのはこうゆうときに使うものなんだな。


出会い系サイトか何かなんだろうか。画面いっぱいを埋め尽くす男たちの顏、顏、顏。


ある程度こちらの要望を伝えてあるのか、男たちの顏はどこか似通っていた。


心音ちゃんのタイプなのかな。白人で髪の色はダークブラウン~明るいブラウン。目の色はブルー系だった。


男たちの顔面レベルは割と…てか結構高い。


「色々悩んでるんだけど、イマイチピンとくるものがなくてね~」


と、心音ちゃんは小さく唸って画面を睨む。


瑠華は確かに心音ちゃんのこと「破天荒」だと言ったが、これはぶっ飛び過ぎだろ!


もう何も言い返せず、俺は魂の抜けかかった目で心音ちゃんのディスプレイを流し見するしかできん。


ちょうどグラスの中のワインが空になった。キリがいいしこれ以上俺は何も言えん。「ごちそうさま。もう寝るよ」と言って立ち上がろうとした。


「Hey.(ねぇ)」


ふいに心音ちゃんに声を掛けられて、俺は再びソファに座りなおした。


『この男なんてどう?』と言う意見を求められたら、適当に返事をしようと思っていたが


俺の予想に反して


「瑠華の過去、どこまで知ってるの?」と聞かれて


俺は目をまばたいた。





「全部」






間髪入れずに答えた。全部知っている自信があったし、今更知らないことが出てきても受け止める自信もある。


「All?Truly?(全部?本当に?)」


試すような物言いで聞かれて、俺はぎこちなくも頭を縦に振った。


「それでいて付き合おうと?」また聞かれて、俺はそれにも頷いた。






「瑠華は良い人に巡り合えたようね」






心音ちゃんはどこか満足そうに……見えたら良かったけれど、その眼はどこかしら羨ましさや、ほんのちょっとの焦燥感なんかが見えた気がする。