六本木のタワーマンションの瑠華の部屋に着いた頃には、すでに俺はげっそり。
ただでさえ、今日は携帯で『真咲』の名前を瑠華に見られるし、ちょっと喧嘩っぽくもなっちゃったし、その後緑川ン家に行って二村と鉢合わせるし、ストーカー女はしつこいし!!
数え上げたらキリがない。
日記にしたら、ノート一冊じゃ収まんないぜ。
心音ちゃんはいい子だし、面白いケド瑠華が「破天荒」と言った理由も分かったし。
マンションのエントランスで、謎のイケメン(年齢不詳)ウチヤマを逆ナンパするし。
だけどウチヤマは張り付けた笑顔でまるでマニュアルを読むかのように淡々と
「Welcome.May I help you?(いらっしゃいませ)」笑顔で無駄に発音良く心音ちゃんに対応していた。
東京都心の一等地にマンションを構えるぐらいだかな、外国人なんかの往来や居住も少なくないんだろう。ウチヤマの英語は滑らかだった。
くっそウチヤマめ!!あの爽やかマスクの下に、ぜってぇ瑠華に下心を隠してるに違いない!
強力なライバルなのに、そいつも英語が堪能ときている。俺は嫉妬心でギリギリと歯軋り。
「Hey!(ちょっと)」と言って瑠華が心音ちゃんをやや強引に引っ張ってカウンターから引きはがす。
「こんなところでナンパはやめてよ」と目を吊り上げる。
「いいじゃない。あたしフリーなんだし。結構タイプ」
「生憎彼はFreeじゃないわ。高校生の娘さんだっていらっしゃるし、別れた奥様と復縁される予定なの。ちょっかいかけて修羅場にしないで」
瑠華が咎めるように言って
「え!?あいつ離婚中だったの…?てか嫁さんと復縁って!?
ねぇ!何でそんな情報瑠華が知ってるの!?」
「あたしは何でも知っているのですよ。ふふっ」
と瑠華が不気味に笑い、
「Damn it!(ちっ!)」と心音ちゃんは舌打ち。
何か……俺らホントまとまりねぇな。こんなんで先が思いやられる。



