Fahrenheit -華氏- Ⅱ



心音ちゃんは一度だけ写真で(悩殺!水着姿だったけどな)見たことがある。


でも


「写真より美人……」
「写真よりイイ男♪」



俺と心音ちゃんの声が重なって、俺は心音ちゃんと思わず顔を見合わせた。


瑠華が無表情にじっとこちらを見ている。


はっ!


俺としたことが!!俺には極上の瑠華と言う彼女がいながら、しかも彼女の親友を変な目で見て!


ヤベっ!!!


慌てて口元に手を当てると、予想外に瑠華はにっこりと微笑んで、何が可笑しいのかクスクス笑い声まで漏らした。


「やっぱり二人似てる。タイミングも内容も一緒って……」


心音ちゃんが居るからかな、ちょっとだけいつもの敬語が抜けてくだけた感じで話してくれるのは嬉しかった。


とりあえずは、怒って無さそうで良かった~~~


ほっと息を着いたところで、俺は乗ってきた車が停めてある駐車場まで心音ちゃんを案内することに。


この後、瑠華の家に行くことになっている。俺が心音ちゃんのスーツケースの取っ手を持ち


「持つよ」


と言うと、意外に意外……大きさの割にそれはずっしりと重かった。


「何が入ってるの?爆弾とか?」冗談で苦笑を浮かべながら、心音ちゃんを振り返ると


「似たようなものね。私がキーボードを一つ押せば、インターネット界は一変するわ」


と心音ちゃんが楽しそうに笑って「Bom!」とやや大げさに両手を挙げて、効果音までつけてくれた。


いや


いやいやいや


何なのそれ。


「キーボードってことはPC類?」この重さだ。「一体何台入ってンの?」と再び聞くと、心音ちゃんは右手で四本指を立て


それに俺はビビった。


「あたし、五時間以上PCに触れないと中毒症状を起こすの♪」


「心音は凄腕のプログラマーです。ネットゲーム界でその名前を知らないと言われる程。根っからのパソコンオタクです」


と、瑠華がさらり。「以前は私の会社でSEとして活躍してくれましたが、ファーレンハイトが他社の手に渡り、その際独立を」


ほ~!!なるほどっ!!


「結構儲かってるのよ♪」と心音ちゃんは追加情報をくれた。


「裕二と気が合いそうだな」と思わず漏らすと


「ユージって誰?Nice guyだったら紹介して♪あたし、Freeなの」


「以前の会話で出た名前よ。麻野さんって方」


瑠華が裕二の話を心音ちゃんに!?


俺の知らないところで俺以外の男の話題を出してたってことにちょっとムっときたが


まぁ??アイツは認めるのも癪だが整った顔立ちをしているし、昔の裕二ならそっこーで口説きに掛かっているだろうが、生憎アイツはキモい程綾子にぞっこんだからな。


「残念ね、麻野さんは素敵な恋人が居るの。他を当たって?」と


瑠華は慣れているのか、心音ちゃんの会話を華麗なまでスルー。


心音ちゃんはどこかつまらなさそうに唇を尖らせていたが、それでもそれほど気にならないのかすぐにご機嫌になって瑠華と腕を組む。


「瑠華の新居、はじめて行くから楽しみだわ♪もちろんケイトも一緒にね」


心音ちゃんは小さくウィンク。


う゛~~瑠華と出会ってなかったらすぐに手を出したいタイプだが、残念……全然その気になんない。


万が一の間違いもなさそうだ。


そのことにちょっと安心。