転がったペットボトルを拾ってくれたのは綾子さんだった。
その合間に少しだけ気持ちを立て直すことができた。
あたしは耳に掛かった髪をかきあげ
「元カレのことを思い出したんです……少し苦しい気持ちになって」
何とか言い訳をこさえ、綾子さんは
「ごめんなさいね…私のせいね。私が言い出したから」
そう勘違いして眉をわずかに寄せた。
「いいえ、綾子さんのせいじゃありません。
本当にただの食べ過ぎですので、お気遣いなく」
あたしは慌てて手を振り、綾子さんに微笑みかけると綾子さんも安心したように笑った。
言えない―――
啓に女の人の影がある。なんて
言えない。



